市橋被告の手記、26日発売 遺族は嫌悪感
千葉県市川市で2007年、英会話講師の英国人リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)が遺体で見つかった事件で、殺人罪などで起訴された市橋達也被告(32)が、逃亡生活の様子や心境などをまとめた手記「逮捕されるまで―空白の2年7カ月の記録」を、26日に幻冬舎から出版することが24日、分かった。編集担当者は「(市橋被告の)観察眼、感性の豊かさを感じた」と話している。
市橋被告は手記で、07年3月に千葉県警捜査員の職務質問を振り切って逃げてから、09年11月に逮捕されるまでの足取りを記述。電車やフェリーで青森県から沖縄県まで計23都府県を転々としたこと、沖縄県久米島近くのオーハ島に4回渡って、自給自足の生活をし、大阪市のフェリー乗り場で逮捕された時も、同島に戻る途中だったこと。08年春頃に、千葉県浦安市のディズニーリゾートを訪れたことも明かした。執筆理由を「自分が犯した罪の懺悔(ざんげ)の一つ」としているが、殺害当時の様子や動機は触れていない。
リンゼイさんに謝罪し、四国で遍路道を歩く一方で「逮捕されればさらしものになる」「指名手配されると、自首しても減刑にならない」と心境を説明。病院で整形手術を受ける前に、針と糸で鼻を縫ったり、カッターナイフで顔のほくろを切除するなど、自ら整形を試みたことも明かした。
担当した女性編集者によると、市橋被告に手記の話を持ちかけたところ、本人にも執筆の意向があった。接見はできないため、間接的な原稿のやりとりだったという。担当者は「観察眼があり、感性が豊かな人物だと感じた」。印税はリンゼイさんの遺族に渡すか、公益のために使いたいとし、市橋被告の弁護団は「自分にできることはないかと考えた行動」と説明している。
これに対し、英国のリンゼイさんの遺族は「裁判の前に、こうした本を書くことが許されるのか。強い嫌悪感を抱いており、傷つけられた」と話している。
千葉地裁では市橋被告の公判前整理手続きが進んでおり、年内に裁判員裁判が開かれる見通しだ。
PR