ギャッギャッギャッ
突然、交差点に、原付バイクと中年女性が横滑りしながら「別々」に突入して来た。
軌跡は斜めを描いてOを捕らえ、そのまま彼のバイクに激突しつつ、更に後方を物理法則に従って転がり落ちてゆき、彼女とバイクは漸く停止した。
回りも時間毎、一斉に停止する。
からからから・・・
・・・・・・・・・
--し・・ん---
交差点に雨音だけが響き渡る。
「・・・・」
暫くして女性はゆっくりと上半身を起こした。
立ち上がる事が出来ずに四つんばいになりながら、ずりずりとOの元へ進む。
額が割れたのか顔を血まみれにしながら弱々しくOの足首を掴み、彼女は言った。
「大丈夫ですか?お怪我は・・・ありませんか?」
ぎゃあああああっ
貴方がお怪我をしていますうううううううっ
Σ(||゚Д゚)ヒィィィィ
スプラッタが苦手なOは一瞬気が遠のいたが、関西人のツッコミ魂が彼の正気を保たせた。
おばちゃーんっ
なんでやねん、なんでやねん、なんでやねーん!!!!
(゚Д゚)/ビシ!
「や、私は大丈夫です、貴方こそ大丈夫ですか!」
バイクから降り、大慌てで女性を助け起こす。
Oの後方に停車中だったタクシーの運転手さんが弾かれた様に外へ飛び出し、Oと血まみれの女性に駆け寄った。
「大丈夫ですか?!」
そうして女性を抱えるOに、
「頭を打っているから揺らさない様に静かに横にしてあげて」
と、アドバイスをくれ、救急車を呼んでくれた。
他にも何人かが回りを取り囲み、女性のバイクを脇へ避け、側に寄りそうOと女性に救急車が到着するまで傘をかざしてくれたという。
「おばちゃん、しっかりしいや!もうすぐ救急車が来るからな!!」
女性の意識が飛ばぬ様、回り中が声をかけ合う。
程なくして警察と救急車が到着し、女性は救急搬送されていった。
その後、Oは事故処理の為、最寄りの警察へ寄り、念のためにと病院へ行った。
症状は軽い打撲。
そして女性も額を切ったので派手に出血をし、更に雨に濡れて大怪我をしたかに見えたが頭部その他に重大な損傷もなく済んだという。
まあ、酷い打撲は免れまい。
経験者は語る。
翌日以降にカニ歩きになること、請け合い。
因みに。
事故の現場は事故多発地帯で有名である。
車もバイクも人もよく事故に遭う。
交差点の少し先にマンホールがあり、恐らく右折だか左折をして来た女性が濡れたマンホールでスリップして転倒したのではないかとOは言う。
「皆、優しいよな」
彼の心に今も残っているのは、冷たい雨と人の優しさ。
そして。
なんでやねーん!
おばちゃーん、怪我しとんのはアンタやー!
(゚Д゚)/ビシ!
そんな魂の叫びという。
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